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電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法は、端的に説明すると「紙文書の電子化を促進する法律」です。
従来は会計帳簿や決算書などの紙書類は、最低でも7年間の保管が必要でした。
2022年1月施行予定の電子帳簿保存法に対応すれば、相手先から入手した領収書や請求書を即時破棄することが可能になります。
以下では、2022年1月に施行が予定されている改正後の電子帳簿保存法の内容や要件について解説します。
改正後の電子帳簿保存法の詳細については、国税庁が公表している「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて」をご参照ください。
電子帳簿保存法の全体像
分類 | 対象帳簿・書類 | どうやって保存する? |
電子取引 | EDI取引、インターネット取引、電子メール取引、クラウド取引等 | 電子データ |
帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、その他帳簿(補助簿)等 | |
決算関係書類 | 貸借対照表、損益計算書、棚卸表、計算・計算又は決算に関して作成したその他書類 | |
取引関係書類(自己発行) | 見積書、契約書、請求書、領収書等 | |
取引関係書類(相手発行) | 見積書、契約書、請求書、領収書等 | スキャナ |
帳簿・書類の電子データ保存要件
■対象「帳簿」例
仕訳帳、総勘定元帳、その他帳簿(補助簿)等
■対象「書類」例
貸借対照表、損益計算書、棚卸表、計算・計算又は決算に関して作成したその他書類、見積書、契約書、請求書、領収書等
要件概要 | 優良 帳簿 |
通常 帳簿 |
書類 |
優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減(5%軽減)措置の適用を受ける旨の届出書を事前に所轄税務署に事前提出 | 〇 | – | – |
記録の訂正や削除をした場合の事実内容が確認可能なシステムを使用 | 〇 | – | – |
帳簿のとその他帳簿の記録事項との間において、相互関連性が確認可能 | 〇 | – | – |
システム関連書類等の備え付け (システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等) |
〇 | 〇 | 〇 |
①電子計算機器(PC等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ、操作マニュアルの備え付け ②記録事項を画面・書面で出力可能 |
〇 | 〇 | 〇 |
取引年月日、取引金額、取引先が検索可能 | 〇 | – | 〇 |
日付や金額の範囲指定で検索可能 | △ | – | △ |
2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件で検索可能 | △ | – | △ |
税務調査時にダウンロードの要求に応じることが可能 | △ | 〇 | △ |
〇:電子保存するに当たって必須要件
△:税務調査時にダウンロードの要求に応じることが可能であれば不要
Point
上記表において「優良帳簿」要件を全て充たす場合(最良な電子保存環境を構築している場合)、以下の特典を受けることが出来ます。
①過少申告加算税の5%軽減
②所得税の青色申告特別控除(65万円)の適用
ただし、電子申告を行っている場合は、以下の「優良帳簿」要件を全て充たしていない場合においても、所得税の青色申告特別控除(65万円)の適用が可能です。
一方、「書類」については、取引年月日、取引金額、取引先が検索可能なシステムを使用することが求められておりますので、例えば、パソコンローカル内でのフォルダ管理などは当該要件を充たさないことになります。
クラウド会計システム(freeeやマネーフォワードクラウド等)を使用している場合は、上記要件を充たします。
電子取引の電子データ保存要件
■対象となる電子取引例
EDI取引、インターネット取引、電子メール取引、クラウド取引等
要件 | 小規模事業者以外 | 小規模 事業者 |
次のいずれかの措置を行う ①タイムスタンプが付された後の授受 ②取引情報を入手後、速やかに(又は業務処理に係る通常の期間の経過後、速やかに)タイムスタンプを付し、保存者又は監督者に関する情報を確認可能 ③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用 ④訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け |
〇 | |
電子計算機(PC等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け | 〇 | |
電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限る) | 〇 | |
取引年月日、取引金額、取引先が検索可能 | 〇 | △ |
日付や金額の範囲指定で検索可能 | △ | |
2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件で検索可能 | △ | |
税務調査時にダウンロードの要求に応じることが可能 | △ |
△:税務調査時にダウンロードの要求に応じることが可能であれば不要
※:小規模事業者とは、判定期間に係る基準期間(2期前)の売上高が1,000万円以下
Point
・電子保存された記録に不正があった場合、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%を加重されることになります。
・タイムスタンプの付与については別途コストが発生することになります。クラウド会計システム(freeeやマネーフォワードクラウド等)を使用している方は上記表における③、データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用していない方は上記表における④を選択する方が多いと考えられます。
スキャナ保存要件
■対象「書類」例
見積書、契約書、請求書、領収書等
要件 | 重要書類 | 一般書類 |
入力期日(概ね7営業日以内(若しくは、業務処理に係る通常期間(最長2カ月)を経過後、概ね7営業日以内)) | ● | – |
大きさ情報の保存(A4以上の書類を読み取る場合) | ● | – |
読み取った際の解像度、階調情報の保存 | ● | |
バージョン管理(訂正や削除の事実及び内容の確認等) | ● | |
入力者又は監督者に関する情報が確認可能 | ● | |
スキャン文書と帳簿の相互関連性の確保 | ● | |
解像度200dpi以上による読取 | ● | |
カラー画像による読取 256階調以上(約1677万色以上) |
● (*1) |
|
見読可能装置(14 インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備付け | ● (*1) |
|
整然・明瞭出力 | ● | |
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け | ● | |
取引年月日、取引金額、取引先の検索が可能 | ● | |
日付又は金額の項目について範囲をした検索が可能 | △ (*2) |
|
2以上の項目を組み合わせて検索可能 | △ (*2) |
|
税務調査時にダウンロードの要求に応じることが可能 | △ (*2) |
|
タイムスタンプの付与期日(概ね7営業日以内(若しくは、業務処理に係る通常期間(最長2カ月)を経過後、概ね7営業日以内)) (※)一般財団法人日本データ通信協会が認定するタイムスタンプ |
△ (*3) |
重要書類:契約書、領収書、請求書、納品書など、資金や物の流れに直結・連動する書類
一般書類:見積書、注文書、検収書など、資金や物の流れに直結・連動しない書類
※1:一般書類についてはグレーでも可
※2:税務調査時にダウンロードの要求に応じることが可能であれば不要
※3:訂正や削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(それができないシステムを含む)において、その電磁的記録を保存することにより、その入力期間内に記録事項を入力したことを確認することができる場合は不要
Point
(1)スキャナ保存後は、以下の場合を除いて即時に廃棄することができます(ただし、捨てる前に最低限の同等確認は必要)。
・紙での保存が要求されている場合
・入力期日が経過した場合
・備え付けのプリンタの最大出力より大きい書類を読み取った場合
(2)スキャナ保存された記録に不正があった場合、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%を加重されることになります。
適用時期
改正電子帳簿保存法の施行は2022年1月です。これまでの電子データ保存の制度が大幅に緩和されるだけに、これを機会に今のうちから自社における電子データの導入を検討し始めてみてはいかがでしょうか。
ブラウン・パートナーズ会計事務所では、改正後の電子帳簿保存法への対応支援を実施する予定です。
電子帳簿保存法(改正後)の対応の検討をお考えの場合は、お気軽にお問い合わせください。